今回の大震災は、日本のものづくりに大打撃を与えた。とりわけ自動車産業への打撃は、今までのどのような天災や人災よりも甚大である。地震の直接的被害が大きくなかった地域の工場も、部品が集まらないために操業がストップしてしまった。生産の本格的な再開までには、まだ時間がかかりそうである。

 自動車は、3万点にも及ぶ膨大な点数の部品によって構成されている。その部品の素材や形状は多様であり、完成車メーカーは、これら部品の約7割をサプライヤーから調達している。しかも、完成車メーカーに直接に納入する1次サプライヤーだけではなく、そこに部品・素材を納入する2次サプライヤーというように、大小さまざまな膨大な数の企業から成る多層的なサプライヤー・システムが形成されている。

〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕

イラスト:つだかつみ

松島 茂(まつしま・しげる)
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
1949年生まれ。1973年3月東京大学法学部を卒業、同年4月通商産業省に入省。大臣官房企画室長、中部通商産業局長などを歴任。法政大学経営学部教授(2001年4月)を経て、2008年から現職。編著書に『イノヴェーションの創出』(有斐閣)など。