イヤホンの振動板にスピーカーとマイクの機能を兼ねさせ、さらに圧力・振動センサとしても利用。この圧力・振動センサで心拍や血圧などの生体情報を測定するシステムが開発されている。データを無線でパソコンに飛ばすことで、複数の人たちの身体状態をリアルタイムで把握できる。危険を伴う作業や、多数の患者や被災者が発生した現場での生体情報モニター技術としての利用を目指す。

 危険な事故現場での復旧作業で、作業員が装着すると役に立ちそうなのが「生体情報対応マルチコミュニケーションシステム(MCS)」(仮称)だ。「複数の人たちの身体状態をリアルタイムで把握できる」と、開発を進めている無線機器開発のイノベンチャー・シー(本社東京都多摩市)社長の勝池康允氏は話す。

 MCSは、イヤホン型ユニットを耳に装着するだけで、心拍や血圧、呼吸音といった生体情報を自動で測定して無線通信で離れた場所に送ることができる(図)。マイクとスピーカーも内蔵しているので無線で通話することもできる。このため、現場の作業員が装着すれば、離れた本部で作業員の身体状態を把握しながら、同時に音声によるコミュニケーションを取ることも可能となる。

 さらに、大事故などの救急医療の現場で、音声通話部分を省いたMCSを患者に装着すれば、多数の患者の心拍や血圧などを一括してモニターできるので、急を要する患者を把握するのに役立つ。災害復旧に従事する人の安全性を高めるため、あるいは被災した負傷者の情報を素早く取得するために有用な技術だ。

〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕

図●「生体情報対応マルチコミュニケーションシステム(MCS)」を装着した様子
心拍、血圧、呼吸音などの生体情報と、発声情報をイヤホン型ユニットで取り込み、無線通信で伝送することができる。