よく「ユビキタス社会」というけれど、それは情報機器が使える環境があってのこと。数ある情報機器は、使える環境が整備されているからこそ使うことができ、ユビキタス社会を支えられる。ここでいう環境とは日常的に使っている住宅や職場のことで、そこには電力供給や通信のためのインフラがある。要するに、情報機器をごく普通に使うことができる環境、という意味である。
従って、ユビキタス社会とは、現実生活の至る所でいつでも情報機器を使える社会ということだ。では、最先端の情報機器をそろえ、それを自然のままにある土地に持って出て、さあユビキタス社会を構築しろとなったらどうなるか。電源はどうする、通信はどうする、風雨にさらされたらどうすると、結局は無理難題だろう。
もちろん、防水性や耐衝撃性に優れたパソコンはあるし、厳しい環境で使用することを前提とした情報機器もある。しかし、電力供給や通信のインフラがない環境で、一度セットしたら数年間はメンテナンス不要、面倒な電池交換もしなくて済むなどというものは、めったにない。
では、例えば農業、それも温室の中で情報機器を使うことを考えてみよう。
〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕
システム・インテグレーション 代表取締役