九州工業大学はこのほど、棒材を局部的に加熱しながらねじり変形を与えて結晶粒を微細化する技術「RMA-CREO(CREO処理)」を開発した。金型が不要な小型設備を利用することで、低コストで材料の高強度化や高疲労強度化が図れる。適用材料は、鋼材やアルミニウム(Al)合金、ステンレス鋼、マグネシウム(Mg)合金、銅(Cu)合金、チタン(Ti)合金などと幅広い。CREO処理した材料を自動車の減速機などに適用すれば、製品の小型化や低コスト化に貢献する。
図(a)は、結晶粒微細化技術を適用している様子だ。赤く見える中央部分で、棒材がねじり変形を受けている〔図(b)〕。具体的には、次のようなプロセスになる。
棒材をぐるぐる回す
棒材をリング状の高周波コイルとその両側にある同じくリング状の冷却ユニットの中に通し、両端をモータに直結した油圧チャックで保持する〔図(c)〕。高周波コイルで加熱を始めると、棒材のそこの部分だけが局所的に変形抵抗の小さい領域となる。この状態で、棒材の両端を保持する油圧チャックの一方、あるいは同期させずに両方を回転させると、非接触で加熱部だけにねじり変形を与えられ、結晶粒は大きなせん断力を受けて微細化する。高周波コイルを左右から挟むように配した冷却ユニットは、せっかく微細化した結晶粒が粗大化しないように直ちに水冷する役目を担う。
ねじり変形を付与したときに発生するせん断応力は、棒材断面の外周部ほど大きくなる。そのため一見、結晶粒は外周部から中心部に向かって大きくなるように思える。ところが実際には、「中心部を除き、ほぼ均一な結晶粒径になる」(今回の技術開発の陣頭指揮を執る九州工業大学先端金型センター特任教授の中村克昭氏)という。
こうした結晶粒の微細化を棒材全体にわって連続的に施すために、高周波コイルと冷却ユニットを軸方向に移動させる。結晶粒微細化の効果は、さまざまな材料で確認されており、例えばAl合金では平均結晶粒径が約1μmまで細かくなった。
〔以下、日経ものづくり2011年5月号に掲載〕