雑誌 特集

転機

技術者という生き方

高橋 史忠、佐伯 真也=日経エレクトロニクス
2011/04/15 09:00
 

新社会を築くのは技術者だ

ルールは変わった。これまでの常識は、もはや通用しない。大きな変革期に何をすべきか。立ちすくむことなく、一歩踏み出すには何が必要か。エレクトロニクス技術者に問われること。それは、転機への対応力だ。

 「ITを駆使して適切な情報をネットワーク経由で届けられるようにする。自分ができるのは、そのための技術を開発すること。国を挙げて、各人が得意な分野で貢献していくしかない。そう思っている」。

 東日本を巨大地震が襲ってから1週間後。IT関連のベンチャー企業であるプリファードインフラストラクチャーで特別研究員を務める岡野原大輔は、震災の復興で技術者がなすべきことを、こう静かに語った。

 被害の大きかった福島県いわき市の出身。故郷の実家は被災した。東京方面に避難してきた親族もいる。そうした中で自分ができることは、得意分野である検索技術や推薦技術などのソフトウエア開発での貢献だと、岡野原は冷静に捉えている。

 震災後に岡野原の心を打った出来事がある。被災者支援のためにネットワークやWeb関連のサービス基盤などをぜひ使ってほしいと、海外のIT関連企業から無償提供を申し出る動きが広がったのだ。世界が日本に救援の手を差し伸べている。そう思うと胸が熱くなった。

 「電話はつながらなくなっても、インターネットだけは途切れなかった。これは、技術の進化が緊急時に役立ったということ。技術で支えられることは、まだ他にも多く存在するはずだ」と、岡野原は先を見据える。(文中敬称略)

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

4月18日号を1部買う

変化に対応する者だけが
挑戦の舞台に立てる

東アジア企業の台頭、事業構造改革、企業の合併・買収──。エレクトロニクス業界の構造変化は、技術者に転機をもたらす。変化の時代をしたたかに生きる技術者の姿を紹介しよう。

転機がもたらす技術者の挑戦

 これまでが準備段階だった。

 久多良木健(60)の目には、今訪れているエレクトロニクス業界の転機がそう映る。

 デジタル機器の価格低下や、東アジア企業の台頭などに苦戦する国内の大手電機・家電メーカー。「だが、待て」と、久多良木は考える。新興国を含む世界中の多くの人々が安価に情報通信端末を手に入れ、膨大な数の人と人がインターネットでつながり合う。この環境整備は、これから訪れる真の変革の助走だったのではないかと。

 家庭用ゲーム機「プレイステーション」をはじめとする、さまざまな機器をソニーで開発した敏腕技術者。自らも、転機に身を投げ出し、その変革の体現を目指す。1年半前に同社出身の技術者らとベンチャー企業「サイバーアイ・エンタテインメント」を立ち上げた。「今のエレクトロニクス技術者は幸せだ」と、久多良木は羨ましがる。クラウド環境の普及やハードウエアのコスト低下によって「昔であれば、構想はあっても到底実現できなかった機器やサービスの開発に挑戦できるのだから」。

 一方で、安易に閉塞感を強調する最近の風潮にはくぎを刺す。「会社は夢を実現するために集まる場所。そのためには、かつて誰かが決めた組織の定義をつくり直す決意も必要だ」。

 今や、エレクトロニクス技術が使われていない社会環境を探す方が難しい。技術者が活躍できる分野は、格段に増えた。新たな製品や技術の開発だけではない。新興国市場の拡大や事業構造改革、企業の合併・買収(M&A)などが、会社の壁を越え、国境を越える挑戦を技術者に迫っている。

 例えば、事業規模や収益性で日本メーカーを引き離しにかかる韓国の大手企業。そこを新たな活躍の場として選んだ日本人技術者は何を見たか──。(文中敬称略)

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

4月18日号を1部買う

7割が転職の活動や検討
変わる技術者の意識

技術者を対象にアンケート調査を実施し、約1400人から回答を得た。その結果からは、転職や新興国勤務などの「変化」をいとわないという意識が見えてきた。背景にあるのは「会社」や「報酬」ではなく、仕事の「やりがい」を重視する技術者の姿だ。

 技術者の約7割が現在の仕事に満足しつつも、同じ約7割が転職の活動や検討をしている──。

 本誌は2011年3月2~11日、技術者向けWebサイト「Tech-On!」上でアンケート調査を実施した。回答した約1400人の技術者の94.1%は、国内に本社を置く企業に勤務する。

 この調査の中で国内の技術者の今をよく映し出しているのが、全体の約67.4%が「転職に向けた活動や検討をしたことがある」と回答したことだ。「これまで考えたことはないが、今後検討/活動する可能性がある」との回答を含めると、83.3%に達する。転職は、終身雇用が守られていたひと昔前なら技術者にとって最大の「転機」といえた。技術者を取り巻く環境変化により、転職に対するハードルはかなり下がっている。

 なぜ、国内の技術者は転職に動くのか。その動機について質問すると、「会社の将来に不安を感じた」が46.3%と約半数を占めており、「自分が希望する仕事に就けなかった」(29.8%)、「他の企業に魅力を感じた」(27.9%)、「自分が対象となる早期退職制度が始まった」(9.4%)などを大きく引き離した。少数意見として、「ヘッドハンティングを受けた」(部品・部材メーカーで設計・開発を手掛ける技術者、30歳代)という声もあったが、総じて会社に対する不安/不満がそこにある。

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

4月18日号を1部買う

突然訪れる転機
求められる「強い意志」

エレクトロニクス産業のさまざまな環境変化にどう対応すべきか。技術者に求められるのは、自ら道を切り開いていく強い意志だ。突然訪れた転機に、技術者はどう動いたのか。

大企業での事業再編を生き抜く
原動力は技術者の思い

 「単に、技術開発を続けるだけなら、ソニーに残るという選択肢もあった。でも、ベンチャー企業で自分の技術を試してみたかった」─。画像処理技術を手掛けるモーションポートレート リサーチャーの川村亮(31)は、ソニーから従業員わずか9人のベンチャー企業の設立メンバーに加わる道を選んだ理由をこう語る。(文中敬称略)

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

日本の常識は通用しない
中国で奮闘する技術者たち

 「新興国で頑張ってみないか」──。

 国内のエレクトロニクス関連企業が中国やインドなど新興国市場の攻略を掲げる現在、技術者が上司から突然、冒頭のような言葉を掛けられるケースが増えている。大手電子部品メーカーである村田製作所の中国法人に勤務する飯田直樹(38、Murata(China)Investment社(村田(中国)投資)経理─EMC技術 応用測定部)と田中啓之(39、Murata Electronics Trading(Shanghai)社(村田電子貿易(上海))産品経理─EMI濾波器、電感産品技術部 商品技術二科)も、そうした経験を持つ。(文中敬称略)

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

韓国企業に転職したワケ
日本人技術者3人に聞く

 国内の大手エレクトロニクス関連企業から、韓国企業に転職する技術者が後を絶たない。以前は国内の大手企業に勤務し、現在は韓国企業で活躍する3人の日本人技術者に本音を聞いた。

『日経エレクトロニクス』2011年4月18日号より一部掲載

4月18日号を1部買う

マイページ

マイページのご利用には日経テクノロジーオンラインの会員登録が必要です。

マイページでは記事のクリッピング(ブックマーク)、登録したキーワードを含む新着記事の表示(Myキーワード)、登録した連載の新着記事表示(連載ウォッチ)が利用できます。

協力メディア&
関連サイト

  • 日経エレクトロニクス
  • 日経ものづくり
  • 日経Automotive
  • 日経デジタルヘルス
  • メガソーラービジネス
  • 明日をつむぐテクノロジー
  • 新・公民連携最前線
  • 技術者塾

Follow Us

  • Facebook
  • Twitter
  • RSS

お薦めトピック

日経テクノロジーオンラインSpecial

記事ランキング