ものづくりのプロセスは、どのような製品を造るかを構想して、それを実現するための設計図を作成するところから始まる。これに関わるのが製品技術だ。その設計図に沿って製品を造るためには、さまざまな技術と設備を開発し、準備しなければならない。これに関わるのが生産技術。そして、この設備が配置された工場で製品を量産することになる。これに関わるのが製造技術である。

 製品の構造が複雑になり、企業の規模も大きくなると、これらの技術は専門性を高め、それぞれ異なる組織で分業されることになる。分業は、専門技術の高度化を図るためには必須だが、一方で、それぞれの組織の中で“方言”が生まれ、技術者は居心地の良い方言の世界で物事を考えるようになる。その結果、部分最適が優先され、全体最適を忘れがちになる。

〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕

イラスト:つだかつみ

松島 茂(まつしま・しげる)
東京理科大学大学院 イノベーション研究科 教授
1949年生まれ。1973年3月東京大学法学部を卒業、同年4月通商産業省に入省。大臣官房企画室長、中部通商産業局長などを歴任。法政大学経営学部教授(2001年4月)を経て、2008年から現職。編著書に『イノヴェーションの創出』(有斐閣)など。