「技術者のための最新中国事典」は、中国に詳しいコンサルタントであり、現役の技術者でもある遠藤健治氏が、最新の中国事情を伝えるコラムです。変化が激しい中国のものづくりや市場、人々の文化や習慣など、日本企業のビジネスチャンスにつながり得る「今」の情報を素早く捉え、独自の分析や対策などのヒントを技術者向けに提供します。

 顧客を電話で長時間待たせる。話がきちんと伝わらない。要求したものと違う製品やサービスを提供する──。かつて、こうしたひどい顧客対応をする中国企業は珍しくありませんでした。顧客志向という考えからは程遠く、手っ取り早く儲けさえすればよいといった安易な考えの企業が多かったのでしょう。

 今の中国企業も変わらないと思っている日本の技術者は多いのではないでしょうか。確かに、以前と変わらずひどい顧客対応をする中国企業もありますが、数年前に比べると中国企業の顧客対応の質は、格段に向上しています。特に、成長が目立つ中国企業ほど顧客対応に優れているといった印象を受けます。

 翻って、最近の日本企業はどうでしょうか。ほとんどの日本企業は社是に顧客志向を掲げています。かゆいところに手が届くきめの細かいサポート、懇切丁寧な説明、そしておもてなしの心。これらは日本企業の美徳であり、強みでもあったはずです。ところが、ここ最近はコスト削減の名の下に、効率一辺倒の考えが幅を利かせ、いつの間にか顧客対応の質が低くなってはいないでしょうか。

〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕

遠藤健治(えんどう・けんじ)
技術者・海外進出コンサルタント
日本と中国を含めたアジアのものづくりに詳しい技術者で、海外進出コンサルタント。京セラ入社後、開発部、生産技術部、品質保証部に勤務。中国工場における製造業務指導が評価され、同社を退社して精密機器メーカーの中国工場にて製造部長や品質部長を務める。現在、業務用機器メーカーの技術者として日本と中国を股に掛けて活躍中。著書に『日系中国工場製造部長奮闘記』『中国低価格部品調達記』(共に日経BP社)などがある。