サンバをコンセプトにクルマを開発した例を前回(2011年3月号)紹介した。しかし、これだけではコンセプトとは何かというイメージがつかみにくいかもしれない。コンセプトは、課題に対して完全に一品一様である。そこで、サンバと対照的なコンセプトの例を今回は紹介する。筆者が開発を担当したエアバッグのコンセプトだ。
鼻血が出るより大きな問題とは
エアバッグをクルマに搭載することは、ホンダの役員のほとんどが最後まで反対か、反対とまではいかないまでも賛成はしなかった。開発期間16年にわたって、その状況は変わらなかった。
筆者がエアバッグの開発に加わって10年ぐらいたったころ、エアバッグの基本コンセプトを経営陣に報告することになった。筆者は開発責任者になっており、それまで半年以上エアバッグの技術コンセプトを考え続けていたが、まだその本質をつかみきれていなかった。本質を探る糸口として、まずは、なぜみんなが反対するのかを考えた。
〔以下、日経ものづくり2011年4月号に掲載〕
中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授(元・ホンダ 経営企画部長)