腕時計やウエアラブルのセンサ端末など,コイン電池駆動の小型機器を近距離の無線通信技術を使ってスマートフォンと接続し,新たな機能を実現しようとする取り組みが進んでいる。注目の近距離無線方式が,「ANT」と「Bluetooth LE」だ。携帯電話機や腕時計,ヘルスケア機器のメーカーが,各種携帯機器への採用に向けて動きを早め始めた。

コイン電池駆動の機器で利用できる近距離無線が登場

 「ようやく,コイン電池で駆動できる低消費電力の無線が手に入る。これで,当社の腕時計にスマートフォン接続機能として載せられる。『G-SHOCK』や『OCEANUS(オシアナス)』などの定番製品も例外ではない。数年で,今の電波時計機能のように普及させたい」(カシオ計算機 羽村技術センター 時計事業部 モジュール開発部 モジュール企画室 リーダーの奥山正良氏)。

 「既に,低消費電力型無線を用いたヘルスケア機器の製品企画の話が動きつつある。ローパワーを生かし,ヘルスケア機器を常時待ち受け状態にするといった,新たな製品企画が可能になるかもしれない」(タニタ MYH開発 課長代理の竹原克氏)。

 ここ最近,機器メーカーの間で,近距離の無線通信機能を機器に組み入れようとする動きが活発になっている。対象となる機器は,腕時計や,身に着ける小型ヘルスケア端末など。いわゆるコイン型の1次電池(以下,コイン電池)で駆動し,これまで無線通信機能が入っていなかったような小型機器である。

 低消費電力型の近距離無線方式を使い,こうした小型の携帯機器とスマートフォンを手軽に接続できるようにして,新たな付加価値を生み出そうとしているのだ。

コイン電池で長期間駆動

 中でも注目されている近距離無線方式が,カナダDynastream Innovations Inc.の独自プロトコル「ANT」と,低消費電力版Bluetoothの「Bluetooth LE(low energy)」(BLE)である。いずれも,小型機器の無線通信機能として使った場合,コイン電池で2年間程度駆動できるほどの消費電力の低さをうたっている。

『日経エレクトロニクス』2011年3月7日号より一部掲載

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