2006年8月、ノートパソコンに搭載したリチウム(Li)イオン2次電池のパックが発火事故を起こし、同パックの自主回収に至って世間を騒がせた。それを機に、電池工業界や電子情報技術産業協会(JEITA)が利用ガイドラインを策定するなど、電池自体の安全性だけではなく機器設計側の安全対策も進んだ。

 ところが、である。その後もLiイオン2次電池による事故は後を絶たない。ノートパソコンと時期を同じくして発生した携帯電話機の電池パックが破裂するといった事故は、それからも断続的に続いている。デジタル・フォトフレームやDVDプレーヤー用のLiイオン2次電池でも事故は起こっている。

 気掛かりなのは、こうした状況にもかかわらず、近年Liイオン2次電池の需要が急増していることだ。特に今後は、電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)といった大容量の車載用途やスマートグリッドの蓄電装置として、Liイオン2次電池は期待されている。

 これはLiイオン2次電池のエネルギ密度が高いためだが、同電池には、使い方や製造上の僅かなミスが重大な事故を引き起こしかねないという負の面も潜む。Liイオン2次電池を使った機器設計では、この点に十分留意して安全策を講じておく必要がある。

〔以下、日経ものづくり2011年3月号に掲載〕