写真:栗原克己

 今でこそ、有名大学卒の高学歴大工を育成する中堅ゼネコンとして注目を集めているけど、創業した頃、具体的には1989年ごろの経済誌がこぞって「外注がいい、外注がいい」「アウトソーシングだ、アウトソーシングだ」って書いていたように、うちは世の中の流れとは全く逆行していた。当時はバブルの時代で手が無いし、手っ取り早く事業を拡大するには外注という発想だったんです。それを見て、私は確信した。「これだ、内製化だ」って。

 実は、これについては知り合いの見識ある建設会社の社長何人かに相談しました。「人を育てて内製化しようと思うんですが…」と。すると、見事に全員が全員「やめた方がいい。そんなの不可能だ」と返すのよ。これに対し私は、「あっ、この人たちは絶対にまねをしてこない。だったら、やれる」と思ったんです。

 よく考えてみてください。安くできることと、安くできるようにすることは、必ずしも一致しない。安くできるようにすることの中には、売らんがために安くさせているだけのことが間々ある。
〔以下、日経ものづくり2011年3月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

秋元 久雄(あきもと・ひさお)
平成建設 代表取締役社長
1948年静岡県生まれ。韮山高校卒業後、自衛隊体育学校に入学。ウエートリフティング選手として、五輪出場を目指す。その後、大手デベロッパー、ハウスメーカー、ゼネコンに在籍し、トップ営業マンとして活躍する。1989年平成建設(本社静岡県沼津市)設立。大卒・大学院卒の大工や職人を正社員として採用し、自社で育てる。信条は「道をつくる」。