環境負荷低減につながる「グリーン・デバイス」として注目を集めるLEDとパワー半導体。これらの性能向上のカギを握るGaN基板が,大きく変わろうとしている。基板の大口径化や製造技術の革新が急速に進み始めたのだ。GaN基板が抱えてきた「価格が高すぎる」という問題が解決される方向が見えてきた。

GaN基板の用途が拡大

 エレクトロニクス機器向けの素材メーカーの間で,先陣争いがにわかに盛り上がってきた製品分野がある。GaN系半導体を利用した素子(以下GaNデバイス)の作製に使う,GaN基板(単結晶)である。

 最初に仕掛けたのが,現在GaN基板をほぼ独占的に供給している,最大手の住友電気工業である。2010年11月に,大幅な低コスト化などを狙ってこれまで口径2インチ(約50mm)が主流だったGaN基板の製品を,2011年度中に6インチ(約150mm)に大型化する方針を打ち出したのだ。この大型基板を安価に製造する目的で,基板メーカーのフランスSoitec社との協業にも乗りだしている。

 これを受けて,即座に動いたのが三菱化学である。同社は,2010年12月に発表した2015年度までの中期経営計画の中で,GaN基板事業の拡大を宣言した。「2015年度までに生産能力を200倍に引き上げて,シェア40%を目指す」(同社)という。三菱化学は事業拡大のため,新たな製造技術を実用化して製造コストの大幅な低減に着手する。「現行の1/10のコストを実現する」(同社)構えである。

LEDやパワー半導体が牽引

 住友電気工業や三菱化学などの素材メーカーがGaN基板事業に対して積極的な姿勢を見せ始めたのは,同市場が今後,大きく成長する可能性が高いからだ。

 GaN基板については,現時点では,Blu-ray Disc装置の光源で使う青紫色半導体レーザでの利用が大半を占める。ただし,今後は,照明や液晶バックライトに利用される白色LED,およびインバータやコンバータといった電力変換器に用いるパワー・トランジスタやパワー・ダイオードなどのパワー半導体への適用が進み,市場が急拡大すると見込まれている。

『日経エレクトロニクス』2011年2月21日号より一部掲載

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