Ford社とGM社が2モータ式ハイブリッド・システムの開発に注力している。遊星歯車機構を利用した“トヨタ流”と言えるもので,これが米国を席巻しそうだ。一方,1モータ式を手掛ける企業は,シンプルな構造を生かしてラインアップの拡充に励む。さらに,Liイオン2次電池の採用や,エンジンとモータの間へのクラッチの搭載などによるエネルギー利用効率の向上も図る。

2モータ式のハイブリッド・システムが続々登場

 二つのモータとエンジンを組み合わせる「2モータ式」のハイブリッド・システム。これは,トヨタ自動車がハイブリッド車(HEV)やプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)に採用する方式である。これが,米国の自動車メーカーが進めるHEVやPHEVの主流になり,米国市場を席巻しそうだ。

 2011年1月10~23日に開催された「デトロイト・モーターショー(2011 North American International Auto Show)」では,米Ford Motor Co.と米General Motors Corp.(GM社)がそろって2モータ式のHEVやPHEVをアピールした。共に,二つのモータとエンジンの動力配分に遊星歯車機構を使う“トヨタ流”のシリーズ・パラレル方式で,それぞれハイブリッド・システムを自社開発して見せた。

 Ford社は2004年からトヨタ自動車とHEV関連特許のクロスライセンス契約を結んでおり,かねて遊星歯車機構を駆使したHEVを開発していた。その際,同機構にアイシン・エィ・ダブリュ製を使っていたが,今回発表したHEVとPHEVではそれを内製品に切り替えた。内製するに当たっては「独自方式などを検討したが,最終的にトヨタ方式が最適」(Ford社 Director of Electrification EngineeringのSherif Marakby氏)との結論に至ったという。

 一方,GM社は2010年末から生産を始めたPHEV「Chevrolet Volt」のハイブリッド・システムを,トヨタ方式の発展形と言える仕組みとしたことを明らかにした。二つのモータとエンジンを遊星歯車機構で接続するが,Voltの場合は三つのクラッチを加えて制御性を高めている。

『日経エレクトロニクス』2011年2月7日号より一部掲載

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