自動車の強度メンバの中でも衝突の衝撃を吸収するフロントサイドメンバ、バンパーステーは質量の大きな部材である。東京工業大学は反転螺旋(らせん)型円筒折り紙構造(RSC)のサイドメンバを開発している。解析段階では、同じ質量で現行のサイドメンバの1.75倍というエネルギ吸収特性を得た。逆算すれば、43%軽くできることになる。

 自動車が前面から衝突する時、客室の変形を最小限に抑えるには、自動車の前部構造で衝突のエネルギをできるだけ多く吸収する必要がある。前にはエンジンやサスペンションがあるが、硬く、変形量が小さいため、衝突エネルギは車体で吸収させるしかない。車体の前後方向に走る左右のフロントサイドメンバ、そしてバンパーステーが潰れていくことでエネルギを吸収する(図1、2)。
 そのために、通常、サイドメンバはできるだけまっすぐな部材を使う基本方針で設計する。曲げやねじりでなく、軸力で受けた方が大きな反力を発生できると考えているからだ。
 その方針は間違ってはいない。ただし完全ではない。実際には最後まで軸力で受けるわけではない。途中で座屈が始まれば曲げやねじれの動きが入ってきてしまう。最悪の場合、座屈によってメンバ全体が曲がってしまう。こうなるとエネルギ吸収量は少なくなる。一定のモデルでの比較だが、4.45kJのエネルギしか吸収できない。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載
図1 フロントサイドメンバ
エンジンルームの中を前後に通る。
図2 バンパーステー
バンパーからの力をフロントサイドメンバに伝える部材。強度が必要で、しかもエネルギを吸収しながら潰れる、という要求はフロントサイドメンバと同じだ。