わずか数mmの厚みの部品だが、エンジンで欠かせない部品がピストンリングである。シリンダ内の気密性を保つ、潤滑油膜を制御するといった基本機能に加え、高出力化や低燃費化の役割を担っている。エンジンの小型化にも貢献している同部品の進化をTPR(帝国ピストンリング)に聞いた。

 ガソリンエンジン車はGottlieb DaimlerとKarl Benzによって今から125 年前の1886年に発明されたとされる。実は、ピストンリングが発明されたのはそれよりさらに前の1854年。当初は蒸気機関用に開発されたが、改良を施して内燃機関にも使われるようになった。
 ピストンリングの役割は主に、ピストンとシリンダ壁面の気密性を保ち、燃焼ガスの圧力を無駄なくピストンの運動に変換することと、シリンダ壁面の潤滑油膜を制御して焼き付きを防止することだ。このほか、リングとシリンダの接触点や油を介してピストンの熱を逃がす、ピストン溝とリング側面の摩擦力によってピストンの首振りを抑制するといった機能も持つ。
 ピストンリングには、エンジン内の高温・高圧の環境に耐え、耐磨耗性が高く、潤滑油の保持力が高いことなどが求められる。中でも、耐磨耗性への要求は高く、乗用車では30万~40万km走行というエンジンの寿命を通しても、シリンダと接触する面はわずか10μm程度磨耗するに過ぎない。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載