研究者の視点
東京大学大学院新領域創成科学研究科教授 堀 洋一氏
東京大学工学部電気工学科教授、東京大学生産技術研究所教授などを経て2008年4月から現職。最近の研究テーマは(1)電気自動車の制御、(2)アドバンストモーションコントロール、(3)福祉制御工学――の三つ。

 500kmを走れる容量のバッテリは、電気自動車(EV)に本当に必要だろうか。EVの航続距離が不十分であることは皆知っている。しかし、まず大容量のLiイオン2次電池ありき、の視点には、かつての燃料電池車ブームとそっくりの危うさを感じる。
 筆者はもう一つの道があると考える。もしEVが電力インフラから直接エネルギをもらうことができれば、航続距離は「電力インフラから離れても安心できる距離」程度あれば済む。停車中の「ちょこちょこ充電」と「走行中充電」によって走るEVが実現すれば、今考えられているのとは異なる「もう一つの」EV社会を描くことができる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載