モータなどの電動アクチュエータを制御するデバイスであるパワー半導体デバイス。クルマの電動化が進むのに従って、さまざまな部分に応用が広がっている。どんな種類、構造があり、どんな用途に向いているのかを解説する。

 パワーMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ)──といったパワー半導体デバイスに対する注目度がかつてないほどに高まっている。現在、世界中のさまざまな半導体メーカーが多くの資金を投じて、パワー半導体の研究開発や製造に取り組んでいる。国内では、東芝や富士通マイクロエレクトロニクス、富士電機、パナソニック、三菱電機、ルネサス エレクトロニクス、ロームなどの半導体メーカーが、パワー半導体市場における覇権をつかもうと本腰を入れ始めた。

CO2排出量を大幅削減

 各社がパワー半導体に本腰を入れる背景には、環境保全に対する世界的な意識の高まりがある。環境を保全するには、電力消費量や二酸化炭素(CO2)排出量を削減する必要がある。しかし、生活の質や利便性は下げたくない。こうした相反するニーズでも、パワー半導体を使えば同時にかなえられる。
 例えば、エアコンである。パワー半導体を使ったインバータできめ細かく制御することで、単純なオン/オフ制御しかできない機種に比べて、快適な冷暖房機能が実現できるうえに、電力消費量を30%程度も削減できる。冷蔵庫や洗濯機なども同様だ。パワー半導体を使えば、快適さや利便性と、電力消費量の削減を両立できる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載