自動車の生産国として日本を追う立場にある韓国は、FTA(自由貿易協定)の交渉で日本を大きくリードしている。今年7月、順調に行けば韓国とEU、韓国と米国のFTAがほぼ同時に発効する。日本貿易振興機構アジア経済研究所地域研究センター主任調査研究員の奥田聡氏に、その影響を聞いた。(聞き手は浜田基彦)

日本貿易振興機構 アジア経済研究所 地域研究センター 主任調査研究員 奥田 聡氏

 FTAが発効すると、EUで現在10%かかっている韓国車の関税がゼロになる。米国で現在2.5%の韓国車に対する関税も5年間の移行期間を経てゼロになる。一方で、韓国で8%ある欧州車、米国車の関税もゼロになる。日本車は今のまま10%、2.5%、8%の関税をかけられるから、価格競争ではそれだけ不利になる。例えば対EUでは、値上げするか、10%コストダウンするかという選択を迫られる今、日本の技術者に対して「10%コストダウンしてください」と要求するのは酷だ。
 その影響を試算してみた。まずEU市場である。韓国からEUへの輸出は乗用車だけで13億2940万ドル増える。この影響で、日本からEUへの乗用車の輸出は4億1630万ドル減ることになる。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載