三菱ふそうトラック・バスは、ディーゼルエンジン「4P10」に組み合わせる6速DCT(Dual Clutch Transmission)「DUONIC」を開発、小型トラック「キャンター」に搭載した。商用車用のDCTは世界初。

 一般のDCTとの違いは入力軸だけでなくカウンタ軸も内外の二重軸になっていること。通常、FR(前部エンジン・後輪駆動)車用のDCTは、入力軸とカウンタ軸が平行に並び、各段に対応したギアセットがあるという構成を基本にしながら、入力軸を二重軸にして前半分は外側入力軸に、後ろ半分は内側入力軸にギアを取り付ける。それぞれに噛み合うギアをカウンタ軸に取り付けてギアセットとする。
 例えば6速の変速機とするには直結を差し引いた5組のギアセットに加えて、カウンタ軸から出力軸(中心線は入力軸と同じ)に戻す常時伝達ギアが1セット、後退用が1セット、合計7セットのギアが必要になる。
 これに対し、ふそうは、6速DCTと5速の手動変速機を共通のケースに収めようと考えた。6速DCT専用に長いケースを用意すると部品の種類が増える。また、その分プロペラシャフトが短くなって継ぎ手の作動角度が大きくなってしまう。
 共通ケースを実現するために、カウンタ軸も二重にするという手法を考えた。この結果、ギアを6セットに抑え、5速手動変速機と同じケースに収めることができた。  クラッチが内外2個あることは一般のDCTと同じ(図)。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載
図 クラッチは内外二重