可変バルブ機構が燃費向上のキーテクノロジーになっている。部分負荷領域での燃焼を改善したり、圧縮比を変えるなど、これまでできなかったような機能を実現するシステムの実用化が進んでいる。可変バルブ機構に縁のなかったディーゼルでも、燃費向上に活用する例が出てきた。

 ハイブリッドシステムなどパワートレーンの電動化が進んでいるとはいえ、依然として燃費向上技術の主流はエンジンの改良である。ここで最近キーテクノロジーとなっているのが可変バルブ機構だ。
 実用化されている主な可変バルブ機構としては、可変バルブタイミング機構と可変バルブリフト・イベント(作動角)機構があり、当初のオン・オフ動作から、連続動作へ、さらに動作範囲を拡大するというように、制御の自由度を広げる方向へ進化してきた。
 可変バルブ機構の制御の自由度が高まってきたことを活用し、最近のエンジンでは、圧縮比よりも膨張比を大きくするアトキンソンサイクルや、ポンピングロスの低減、燃焼速度の向上などにより燃費を向上させる例が増えている。
 可変バルブ機構の制御の自由度が大幅に向上したことを象徴する代表例が、ドイツSchaefflerグループが開発し、イタリアFiat社が「Alfa Romeo MiTo 1.4T Sport」に搭載して実用化した「Uni-Air」(図、Fiat社は「MultiAir」と呼ぶ)である。
 この機構は世界で初めての油圧バルブ駆動システムで、バルブリフト、バルブイベント、そしてバルブタイミングを一つのシステムで制御できるのが特徴だ。Schaefflerグループはこの機構により、燃費を最大10%、低速域でのトルクを最大15%向上できるとしている。さらに、過給とエンジン排気量縮小(いわゆるダウンサイジング)を組み合わせれば、燃費の向上幅は最大で25%になるという。

以下、『日経Automotive Technology』2011年3月号に掲載
図 ドイツSchaefflerグループの油圧可変バルブ機構「UniAir」の構成
ローラフォロワがカムで押される力を油圧に変換し、バルブを押す。油圧をソレノイドバルブで制御することで、バルブのリフト量を変えられる。