東京のタンポポには、帰化植物のセイヨウタンポポ(外来種)と日本在来のカントウタンポポ(在来種)がある。在来種は種を付けるのに昆虫の助けが要るが、外来種の方は受精を必要としないため、昆虫の少ない東京などではほとんどが外来種に取って代わられてしまった。(海野和男著、『東京昆虫図鑑』)

 1つの花でできる種の数は、在来種の方が外来種よりずっと少ない。しかもその種は、秋まで発芽しないという性質がある。

 外来種は1年中、花を咲かせ、自分独りで種を作り、その種はどこででもすぐに発芽して、また花を咲かせて種を作る。在来種がこんな外来種と競争しても勝てるはずがない。(田中修著、『雑草のはなし』)

 似たようなことが企業にも起こる。本社で開発・設計したものを地方の製造事業所や子会社に移管しようとするときだ。

〔以下、日経ものづくり2011年2号に掲載〕

イラスト:城芽ハヤト

西 美緒(にし・よしお)
元・ソニー業務執行役員上席常務
1966年3月慶応義塾大学工学部応用化学科を卒業後、ソニーに入社し研究開発業務に従事。1991年にリチウムイオン2 次電池を開発し、世界初の商品化に成功。業務執行役員上席常務CTO(マテリアル担当)などを歴任し、2006年に退職。