金属プレス機製造のアミノが手掛ける圧縮木材事業が軌道に乗りつつある。当初は機械技術を生かして同木材の生産設備メーカーとして参入したが、10年間、受注は皆無だった。それでも撤退はせず、逆に木レンガやフローリング材の販売へと、事業領域を拡大してきた。最近になってその努力が実を結び、木材の感触を生かした自然素材として評判を呼んでいる。

 「日本の山林を、そして林業を再生させなければならない」。アミノ会長の網野廣之氏の思いだ。

 プレス機メーカーのアミノが、畑違いの圧縮成形木材(以下、圧縮木材)の生産と販売に参入したきっかけは、1996年に中小企業事業団から「木材圧縮加工機」の研究開発を委託されたことだった。プレス機で培った開発力を見込まれたのだ。開発期間は1996年度からの3年間で、東京都立大学(現在の首都大学東京)、東京都森林組合連合会と共に産官学による共同事業だった。

何に使えるのか

 1998年に木材圧縮加工機は完成する。アミノの本社がある静岡県富士宮市内のホテルに、全国の森林組合の関係者など約100人を招き、満を持して加工機を披露した。ところが、30機は売れるとみていたのに全く売れなかったのである。会場では、「圧縮木材を何に使えばいいのだろうか」という声が漏れていた。

 委託された開発は成功し、目的は達成したのだからそこで手を引いてもよかった。しかし、「3年間の開発には、既に7000万円の血税が使われていた。その金をどぶに捨てるわけにはいかない」と廣之氏は考えた。そのためには「圧縮木材の用途を見つけなければならない」(同氏)。

 アミノは木材圧縮加工機の製造から、圧縮木材そのものの製造と販売にまで踏み込んでいく。本格的に事業化するために、共同開発した加工機の買い取りや専用の開発工房の建設などに約3億5000万円の設備・開発投資も実施した。しかし、その後ほぼ10年間、圧縮木材はほとんど売れなかった。

〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕