現象の将来を大づかみに予測して外さない素晴らしきツール「固有値」について解説しています。ある状態に対して何らかの操作をした後の状態(yn+1)は、その前の状態(yn)に「ある数字」を掛け算したのと等しい。このとき、「ある数字」のことを固有値といいます。固有値をrとして、同じ操作をn回したとすると、将来の状態はrnで表せる。微分とか積分とか、操作の種類はいろいろあるけれど、どんな場合でも例外なくこの形に導けます。だから、この式さえ頭にたたき込んでおけば、あなたはもう固有値の達人です。
前回(2011年1月号)の授業では、この固有値をしっかり押さえる上で、いやっ、人生を歩む上で最も重要な固有値の基本を学びました。皆さん、覚えていますか? r<1なら将来はどんどん0に行く、r=1ならずっと1のまま、r>1なら発散する、というもの。その例として、最初は下手くそだったけど、30年間、師匠に言われた通りに松の絵ばかり描いていたら、有名になった絵描きの話をしました。彼の固有値は、たった0.01の差かもしれないけど、1よりも大きかったわけです。
さっ、今日はまた新しい話題を取り上げます。私の大好きな映画『ダ・ヴィンチ・コード』の謎。はいっ、では『ダ・ヴィンチ・コード』を見たって人!(生徒のうち1人だけが恐る恐る手を挙げる)
あれ? ここでわーっと盛り上がる予定だったんですが…(笑)。では皆さん、帰りにDVDを借りて見てください。映画の中で、こんなシーンが出てきます。主人公の大学教授と警察の暗号解読官である女性が、この女性の祖父が所有する金庫を開けようとするシーンです。祖父は既に何者かに殺されていて、パスワードが分かりません。
〔以下、日経ものづくり2011年2月号に掲載〕
東京大学 教授