2010年7月16日午前2時45分ごろ、首都高速中央環状線外回りの山手トンネル(長さ約11km)初台南出口付近で、天井からつり下げられていた出口案内用の看板が突然落下した。取り付け用の鉄枠も含めると質量1.6tにもなるこの大型看板は、車線を塞ぐように横たわり、外回りの一部は5時間にわたって通行止めとなった。

 落下したのは、内部に照明がある内照看板と呼ばれるもの(図)。事故当時は何台かのクルマが付近を通行していたが、幸い深夜だったこともあり、走行中のクルマを直撃するなどの大きな被害には至らなかった。しかし、もし通行量の多い昼間に落下していたら大惨事につながっていた恐れもある。

 事故現場を含む山手トンネルの大橋ジャンクション~西新宿ジャンクション間の4.3kmは、事故発生のおよそ3カ月半前の3月末に開通したばかり。なぜ、新しいトンネルでこのような事故が発生したのだろうか──。

 首都高速を管理する首都高速道路(本社東京)は、「初台南出口付近案内看板落下事故調査委員会」を設置して原因の究明に乗りだし、2010年12月13日にその結果を公表した。

 落下した内照看板の大きさは、幅4.5×高さ1.7×奥行き0.55m。看板上部に取り付け用の鉄枠があり、ダクタイル鋳鉄製のトンネル天井部のセグメントに20本の打ち込み式ピンで固定されていた。このピンは直径4.5mmのステンレス鋼製で、ダクタイル鋳鉄製の天井セグメントの穴(直径4mm、深さ7mm)に、4.5mm以上打ち込むこととなっていた。

 事故調査委員会が調べたところ、打ち込み式ピンは全て抜け落ちていた。ただし、20個の穴に過大な穴径や深さの不足、打ち忘れなどの問題は確認できなかった。抜け落ちたピンについても、20本のうち10本を回収できたが、異常は発見されておらず、いずれも形状や寸法は規格通りで、破断や変形なども認められなかったという。

〔以下,日経ものづくり2011年2月号に掲載〕

図●落下直後の看板
内部に照明を設けた幅4.5×高さ1.7×奥行き0.55mの大型看板で、取り付け部の構造物も含めると質量は1.6tにもなる。写真:首都高速道路