先日、経営学の先生と話していて「どこも同じだな」と思ったことがある。その先生は、「試験に穴埋め問題を出すと学生に評判がいいが、正解が1つに決まらない問題を出すと極めて評判が悪い」と嘆いていた。例えば、「ある物を造っている組織にリーダーがいない場合、組織の生産性を高めるには何をすればよいか」というような問題だ。
この問題は、かなり漠然としている。「何を造っているのか」「どんな組織(人の構成など)なのか」によってやり方が大きく変わるのに、そこが分からない。「問題として成立していない」と文句が付きそうだ。こうした問題では、自分で仮定や条件を設定し、これらを前提として、生産性を高めるための方法を提示しなければならない。つまり、問題自体を決めた上で答える必要がある。当然、答えは1つではない。
筆者が「どこも同じ」と感じたのは、ある大学の工学部で同種の課題を出したことがあるからだ。その課題は、生産性の問題よりは多少親切で、「自動車事故の発生状況や原因などを教えた後で、まだ誰も考えたことのない、全く新しい安全方策を提案せよ」というものだった。学生の提案は、どこかに見たことがあるようなものばかりで、独創性のかけらさえなかった。
〔以下、日経ものづくり2011年1月号に掲載〕
中央大学 大学院 戦略経営研究科 客員教授(元・ホンダ 経営企画部長)