コントローラを手に持つことなくゲームを操作できる,Microsoft社のジェスチャー入力装置「Kinect」。発売開始からわずか1カ月足らずで250万台以上を売り上げるヒット商品となっている。Kinectの登場はゲーム業界のみならず,エレクトロニクス業界全体に大きなインパクトを与えそうだ。

距離画像センサのデータを基に全身の動きを検知

 「携帯端末におけるiPhoneのように,『Kinect』の登場以前と以後で,電子機器の世界が大きく変わる可能性がある」(U'eyes Design ユーザセンタードデザイン事業部 第2UCDグループ アシスタントマネージャーの原田養正氏)──。

 人間の動き(ジェスチャー)や音声だけでゲームを操作できる米Microsoft Corp.の「Kinect for Xbox 360」。コントローラが一切不要という,消費者に分かりやすい特徴を持つことなどから,2010年11月4日の発売から25日間で250万台を売り上げた。Kinectには,ユーザー・インタフェース(UI)開発の専門家なども強い関心を寄せる。電子機器のUI開発に携わる原田氏は,Kinectが持つ新たな入力デバイスとしての可能性を,冒頭のコメントのように高く評価する。

 Kinectのインパクトとは何か。本誌はKinectを入手し,ハードウエアとともに,UIや使い勝手の分析を行った。

Wiiが火を付ける

 そもそも,ジェスチャー入力技術が大きな注目を集めたのは,今から約4年前。任天堂の据置型ゲーム機「Wii」の登場がきっかけである。片手で持ってジェスチャーで操作する「Wiiリモコン」は,従来のような両手で持つコントローラよりも直感的な操作感が得られるとあって,リアルさを追求する新たなゲームの創出やユーザー層の拡大に貢献した。

 そのジェスチャー入力技術を,コントローラが不要という“究極”にまで進化させたのがKinectである。Wiiでは,Wiiリモコンと,テレビ側に設置する「センサーバー」を使って,ユーザーの動きや位置を検出していた。これに対して,Kinectはテレビ側に設置するセンサ装置だけで全身の動きを検出する。例えばテレビの前で踊るだけでダンス・ゲームを楽しんだり,足を振ってサッカー・ゲームに興じたりできる。

 Kinectでは,ゲームだけでなく手をマウス代わりにしてポインタを操作したり,動画や音楽を操作したりすることも可能だ。音声認識機能も備えており,ユーザーがしゃべるだけでコンテンツの再生や停止といった操作もできる。

 このように,コントローラが不要になる利点は多い。手が自由になり,現実世界と同じ動きでキャラクターなどを操作できる。直感性が高まるので,ゲームがよりリアルになる。

『日経エレクトロニクス』2010年12月27日号より一部掲載

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