2400人以上の電池関係者が集まった「第51回 電池討論会」が開催された。発表件数が大幅に増えたのが,Liイオン2次電池の高容量化のカギを握る正極材料である。さらに,ポストLiイオン2次電池となる全固体電池やLi空気電池の発表が増加している。急拡大を見せる大型電池市場を狙い,次世代電池の研究が活発化している。

高電圧化と高容量化を探る正極材料

 電気自動車などの電動車両や,定置向けの蓄電システムに向けた大型電池の開発機運が世界的に高まっている。現状のLiイオン2次電池を超える性能を示す次世代のLiイオン2次電池の材料をはじめ,新たな反応機構を有する革新的な電池を生み出そうと研究開発が本格化している。

 こうした中,開催された「第51回 電池討論会」では,Liイオン2次電池の正極材料と全固体電池,Li空気電池に関する発表が増加した。その背景には,大型電池向けLiイオン2次電池のエネルギー密度を,2015~2020年ごろをメドに現行の約2倍となる200~300Wh/kgに高めたいとして,材料の開発を進めていることにある。

 さらに,その先の2020~2030年ごろの適用を目指し,全固体電池やLi空気電池などポストLiイオン2次電池の実現に向けた基礎的な研究が盛り上がり始めている。

 正極材料の発表件数が増えたのは,現状の正極材料が負極材料に比べて比容量が低く,新たな材料開発が急務となっているためだ。負極材料は既に実用化しているSnやSiなど,現行の2倍以上の1000mAh/gを超える比容量の候補があるものの,正極材料では現状で200mAh/gを超える材料は実用化されていない。そのため,正極材料の研究が活発化している。

 一方,ポストLiイオン2次電池である全固体電池やLi空気電池の件数の増加は近年,トヨタ自動車などの企業が積極的に発表していることから,この分野への関心の高まり,研究者が増えたことが要因とみられる。

『日経エレクトロニクス』2010年12月13日号より一部掲載

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