EV(電気自動車)で一番重い部品は恐らく電池である。平たい電池を敷き詰める場合、床に荷重が分散する。車軸のそばに荷重が集中するエンジン車に比べ、床板に要求される剛性が高い。東京工業大学は、クルマの床板を軽くする方策として、鋼板を凹凸に加工し、重ねて接合する手法を研究している。

 構造用の素材には、軽い割に剛性の高いことが要求される。その要求に応えた代表的な例にハニカム・サンドイッチ・パネルがある。Al(アルミニウム)などの金属箔を接着剤で蜂の巣状に成形したハニカムコアを、2枚の表面材で挟み込んだ構造である。高い比強度、比剛性があるほか、衝撃に強く、遮音性、吸音性、断熱性など、さまざまな機能、特性を持ち、航空機などで広く使われる。
 当然、自動車でもハニカム・サンドイッチ・パネルを使いたい。ところが、製造プロセスが複雑で、どうしても高価になる。日産自動車「GT-R」のような高価な車種ではストラット頂部の結合材などにハニカム・サンドイッチ・パネルを使っている。ただし、安い車種を含めたさまざまな製品に広く普及させるためには、もっと容易に造れ、安くできる新しい部材が必要である。
 「折り紙工学」という工学分野がある。日本の折り紙に着目し、板材を折ったり曲げたりして強い構造体を作ることを研究している。既に建築や宇宙の分野で応用が始まっている。厳密に「折り紙」のような単純な造形を追求するのも興味深いが、工学的には曲げたり、絞ったり、接着したりすることを許した方が応用の幅が広がりそうだ。ハニカム・サンドイッチ・パネルもその中に入る。

以下、『日経Automotive Technology』2011年1月号に掲載