中国で仕事をするようになった日本人の多くが最初に驚くのが、中国社会の格差の大きさです。中国人の場合、生まれながらにして格差の渦の中に放り込まれるといっても過言ではないほどです。
例えば、教育の分野。最近は、大学を卒業して入社した中国人社員がいかに優秀であるかが日本にも伝えられるようになりました。日本の大手企業の中には、日本での採用を絞り、中国をはじめ新興国での採用を拡大するところも現れています。
これはもちろん、今後も大きな成長が期待できる新興国市場において現地のスタッフを増やしたいということが大きな理由ですが、それだけではないでしょう。「ゆとり教育」などの影響で基礎学力不足が指摘されている最近の大卒の日本人社員は、再教育のために時間とコストが以前よりもかかっているというのが現状です。それなら、世界に目を向け、申し分のない学力を備えた人材を採用すればよい、という経営判断が働いたと考える方が自然でしょう。
といった話を聞くと、中国の教育はすごいという印象を受けると思うのですが、実はそうとは言い切れません。グローバル企業が欲しがる目から鼻に抜ける優秀な人材が多くいる一方で、字も読めない人がたくさんいます。小学校にも通えないほど貧しい家庭がいまだに存在するからです。
〔以下、日経ものづくり2010年12月号に掲載〕
技術者・海外進出コンサルタント