2010年6月下旬に1米ドル=90円を切った為替市場は、10月末には1米ドル=81円を下回り、依然円高が続いている。このため、製造業の海外移転が一層進み、国内産業が空洞化するのではないかと懸念されている。

 本誌の調査からは、もはや為替レートに関係なく、生産拠点の海外移転など製造業の海外シフトは避けられないとの見方が製造業の現場に広がっている様子が見て取れる。

 2005年秋ごろの為替レート(1米ドル=115~120円程度)の円安に転じた場合に、生産拠点の国内回帰があるかどうかを聞いたところ、「回帰する」と考えているのは全体の約1/4の24.1%にすぎなかった(Q1)。これに対し、「為替レートにかかわらずもはや回帰しない」との回答は44.8%を占めた。「その程度の円安では回帰しない」(22.1%)も含めると、回答者の約2/3は国内回帰に懐疑的である。円高回避だけが生産拠点の海外移転の要因ではなく、労働コストや市場成長なども含めて、避けられない状況とみている技術者が多いようだ。

〔以下、日経ものづくり2010年12月号に掲載〕

[画像のクリックで拡大表示]