雑誌 特集

高齢化を味方に

日本発の製品/サービスを世界へ

小谷 卓也,大下 淳一=日経エレクトロニクス
2010/11/26 09:00
 

第1部<総論>
実験場と化すニッポン
“高齢化先進国”に視線集中

世界に先駆けて超高齢化社会を迎える日本は,高齢者向け製品やサービスの実験場になる。この実験場でノウハウを蓄え,その後の事業拡大に生かすため,世界の視線が集まり始めた。高齢化を“味方”につければ,日本のエレクトロニクス企業にとっては絶好のチャンスとなる。

位置付けが変わり始める高齢者市場

 今後10年,日本は高齢者向け製品やサービスの実験場と化す。そして将来,この実験場で磨かれた“日本発”のノウハウは,世界でも求められるようになる。

 それを裏付けるのが,オランダRoyal Philips Electronics社や米General Electric Co.(GE社)といった世界的企業の取り組みである。両社は2011年,日本で高齢者向けの事業に参入する。その皮切りとして,Philips社は緊急通報システム「Lifeline」,GE社(GEヘルスケア・ジャパン)は見守りシステム「QuietCare」のサービスを,それぞれ始める計画だ。

 「日本で優れたビジネスモデルを作れれば,世界に展開していける」──。日本で事業に乗りだす狙いについて,フィリップス エレクトロニクス ジャパン 代表取締役社長のDanny Risberg氏と,GEヘルスケア・ジャパン 代表取締役社長 兼 CEOの熊谷昭彦氏は,くしくもこのように声をそろえる。まさしく,日本においてノウハウを蓄積し,事業を磨き上げ,将来の世界展開に向けた布石を打とうとしているのだ。

先陣を切る日本,続くアジア諸国

 このPhilips社やGE社の動きの背景にあるのは,二つの事実である。(1)日本において今まさに,かつてどの国も経験したことがないスピードで高齢化が進行していること。(2)将来,同じ状況がアジア諸国を中心に世界にも伝播していくこと,である。

 つまり,これまで“ニッチ”な存在だった高齢者市場は,世界各地で“マス”へと近づこうとしているのである。高齢者市場は無視できない存在になるどころか,「高齢者市場に対応していかない企業は生き残れない。対応できない企業は落ちこぼれていく」(東京大学 高齢社会総合研究機構 機構長 教授の鎌田実氏)という状況が,にわかに現実味を帯びてくる。だからこそ,世界に先駆けて変化の波にのまれる日本が,いやが応でも高齢者向け製品やサービスの実験場と化そうとしているのである。

 実際,世界の多くの視線が今,日本に集まり始めている。

『日経エレクトロニクス』2010年11月29日号より一部掲載

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第2部<取り組み事例>
高齢者市場はこう攻める
製品/サービスの五つの要件

高齢者向けの製品やサービスを離陸させるには,この世代の生活習慣や消費傾向に見合う価値を提供することが欠かせない。若い世代を主な対象としてきた従来の発想からの脱却が必要だ。

高齢者向けビジネスの五つのポイント

 エレクトロニクス関連企業による,高齢者向けの製品やサービスに共通して求められる要件とは,何だろうか。本誌が各社の取り組みから導いたのは,次の五つだ。

 (1)日常生活に溶け込んでいること,(2)単純明快であること,(3)社会とのつながりをもたらすこと,(4)居住地域と連携していること,(5)人間的要素を感じさせること,である。

 いずれも,若い世代を主な対象としてきた従来の製品やサービスでは,ほとんど考慮されてこなかった項目といえる。

高齢者の日常に寄り添う

 (1) 高齢者に提供する製品やサービスにとって,日常生活に溶け込むことが重要なのは,高齢者の生活習慣がパターン化されている場合が多いからである。この生活パターンを乱す製品やサービスは受け入れられにくい。「これまで通りの日常を温存しつつ,新しい要素をそっと持ち込むことが重要」(ソフトウエア開発を手掛ける情報環境デザイン研究所)になる。

 (2) 単純明快さが求められるのは,高齢者は一般に複雑さを好まない傾向が強いからだ。メリットの分かりやすさやインタフェースの単純さが高齢者には魅力と映る。例えば,製品のインタフェースには「考えたことを目に見える形でシンプルに表現できることが求められる」(富士通)という。

 (3) 社会とのつながりは,高齢者に幸福感や生きがいをもたらす点で重要である。定年退職を迎えたり,子供が独立したりした結果,社会から孤立してしまう高齢者が少なくないことが背景にある。自ら積極的に社会参加しようとする意欲を持ち,「自分の知見や経験を社会に還元したいと願う高齢者も多い」(シニア世代向けコミュニティー・サイトを運営するシニアコミュニケーション)という。

 (4) 居住地域との連携は,定年退職後に地域に密着したライフスタイルを築くことが多い高齢者には大きな魅力といえる。頻繁に足を運ぶ商店街や公共施設,所属する自治体などにひも付けされたサービスにアクセスしやすいからである。

 (5) 人間的要素を感じさせることは,高齢者に安心感や信頼感をもたらす。新しい製品やサービスへの心理的な抵抗感を和らげる効果を期待できる。

 各社の取り組みは,これら五つの要件のうち複数を満たす場合が多い。

『日経エレクトロニクス』2010年11月29日号より一部掲載

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