独自の機能を持つ製品やサービスであふれ,“ガラパゴス”と揶揄されることが多い日本市場。今回のCEATECから分かったことは,日本発の取り組みは提案力で輝きを失っていないばかりか,世界を驚かすだけの素地をまだ十分に備えていることである。再生に向けた胎動を感じる。

 スマートフォンとその周囲にある機器が連携することで,機器に新しい使い方が付け加わったり,新しい楽しみ方が広がったりする──。「CEATEC JAPAN 2010」を通して垣間見えたのはそんな未来の姿だった。

 例えば,アルプス電気のブースでは,スマートフォンと車載機器を無線LANやBluetoothを使って連携させることで,車内環境が大きく変化することを参考展示として見せた。スマートフォンとテレビやSTBを連携させて映像視聴に新しい価値を加える,住宅設備をスマートフォンからコントロールできるようにする,あるいは医療機器や生体センサと連携させてこれまでにない健康増進サービスを提案する試みなどもあった。

 これまでも,ユーザー端末と周囲の機器を連携させる利用モデルは「ユビキタス・コンピューティング」の掛け声の下,何度となく語られてきたし,CEATECにおいても毎年のように参考展示がされてきた。しかし,いずれも,機器側やユーザー端末側に特殊な仕組みが必要とされ,コンセプトのレベルにとどまっていた。

 今回のCEATECは例年とは異なり,展示が現実味のあるものとなった。実際,今回展示された製品やサービスの多くは,既に商品化のスケジュールが決まっている,あるいは実用化が近いものだった。

多彩な機能を前提に開発可能

 端末とその周辺の機器の連携に現実味がグッと増したのは,ユーザー端末としてスマートフォンを想定できるようになったためだ。スマートフォンは従来の携帯電話機と異なり,(1)PAN(personal area network)機能,(2)自由なアプリケーション実行環境,(3)高精細かつタッチ・パネルで操作可能な画面,(4)大容量のストレージ,を持つ。こうした機能を前提にできることで,外部機器との連携やデータの持ち出しなどが格段に容易になったのだ。

『日経エレクトロニクス』2010年11月1号より一部掲載

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