雑誌 特集

家から始まる蓄エネ社会

電機・住宅・自動車が三つ巴で挑む

野澤 哲生,狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2010/10/29 09:00
 

第1部<インパクト>
住宅やビル内を最適制御
エネルギー技術の刷新を先導

エネルギーは貯めて使う──。このことが,当たり前になる時代が来た。蓄電池など蓄エネルギー技術が住宅やビルから使われ始める。電力や熱の位置付けが大きく変わり,幅広い分野で新技術が登場してくる。

電機/住宅/自動車メーカーによる三つ巴の開発競争

 2011年は,蓄電池を積極活用した「蓄エネルギー」の導入元年になりそうだ。一戸建て住宅やマンション,小規模ビルといった身近な建物に,エネルギーを貯蔵する目的で蓄電池が設置され始める。この結果,消費者の日常生活の中で,エネルギーの使い方が大きく変わることになる。

 蓄電池導入によるインパクトの一つは,電力の「タイムシフト」が可能になることだ。かつて家庭にビデオ録画機が導入され,放送番組をタイムシフトして見られるようなったときと同様,電力を蓄電池に貯め,それを好きな時間に使えるようになる。

 こうした変化は,消費者や家電機器から見た電力の概念を大きく変える。これまでは一方的に送られてくる電力を受動的に消費するだけだったが,これからは家やビルなどの事情に応じて,エネルギーの最適管理が可能になるからだ。

 電力だけではなく,熱エネルギーも含めたトータルなエネルギー制御技術が求められることから,住宅やビル自体も変わっていく。電力事業者の電力料金体系も,いや応なしに変わらざるを得ない。住宅やビルから始まるこの変化は,地域や電力系統にも波及するだろう。こうした,将来を見越した新しい技術の開発競争が今,さまざまな業界で始まりつつあるのだ。

『日経エレクトロニクス』2010年11月1日号より一部掲載

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第2部<電気を貯める >
蓄電池を活用して世界へ
住宅や工場,地域で実証試験

蓄電池を活用したエネルギー管理システムの開発に,日本メーカーが積極的に取り組んでいる。日本の蓄電池技術の優位性を生かせば,国際競争で一歩先に行ける可能性があるからだ。技術検証を急ぐため,住宅や工場,ビル,地域に対応した実証試験が続々と始まっている。

蓄電池の優位性を活用したい

 「トヨタ自動車とミサワホームが提携」「トヨタホームにデンソーやアイシン精機が出資」「日立製作所とパナソニックが提携」「明電舎とNECが提携」──。蓄電池を活用したエネルギー管理システムを,住宅や工場,そして地域にいち早く構築しようと,日本メーカーの提携話が相次いでいる。

 日本では一戸建て住宅やマンションなど,配電網末端への太陽電池の大量導入が予想されており,配電網への逆潮流対策が急務の課題である。一方,世界では,スマートグリッドの本格的な取り組みが始まりつつある。太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーを地域に大規模導入する上で,電力網の安定化が大きな課題となっている。

 これらの課題を解決できる有力な手段として,日本メーカーの多くが蓄電池を用いたエネルギー管理システムの開発に期待を寄せる。蓄電池は,日本メーカーが強みを持つ事業分野である。このため,いち早く蓄電池を積極活用したシステムを構築できれば,国際競争でも優位に立てるからだ。

 電池メーカーも,こうした動きに歩調を合わせ,積極策に打って出ている。三洋電機やソニー,パナソニックなど大手Liイオン2次電池メーカーが大容量タイプの製品開発を急ぐほか,NECやエリーパワー,東芝なども大容量製品の事業化を加速し始めた。

 電機メーカーや住宅メーカー,そして電池メーカーなどの実証試験も急増している。各社とも,日本市場と新興国市場への展開を両にらみで進めているが,「日本で技術検証を進め,世界で展開する」という考え方は共通だ。

『日経エレクトロニクス』2010年11月1日号より一部掲載

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第3部<熱を貯める >
熱と電力の連携技術が続々
ヒートポンプを軸に家電を再編

熱は,電力と並ぶエネルギーの一形態。熱と電力の創・蓄・省エネ技術を融合させることで,新次元のエネルギー技術が生まれてくる。

 蓄熱のタイムシフト機能を利用した新しい家電が登場へ

 大容量の蓄電池の登場にタイミングを合わせる格好で,開発や利用の歴史が長い熱エネルギーを貯めて使う蓄熱技術にも技術革新の波がやって来た。ヒートポンプなどの蓄熱技術を軸に,熱エネルギーを電力などと連携させて利用する,あるいはこれまでは活用されていなかった熱エネルギーを発掘して利用しようという動きである。

 ZEHやZEBの実現のために,建物内のエネルギー消費や熱の出入りを統括制御することによって,CO2排出量を最小限にするという機運の高まりが背景にある。

 こうして,蓄電技術とは補完的な関係にある蓄熱技術自身が進化することで,従来にはない,電力と熱が融合した新しいエネルギー技術が登場しつつある。

電気の座を熱が脅かす

 蓄熱技術は,近い将来の普及が見込まれる蓄電池の対抗技術としても重要になる。大きな利点は,蓄電池に比べ蓄熱媒体のコストが低いことだ。放熱を抑えられれば,水やコンクリートなども蓄熱媒体になり得る。しかも今後は,これまでの「熱は熱,電気は電気」というすみ分けの境界がぼやけ,同時に熱の利用効率が高まることによって熱エネルギーが扱われる比率がさらに高まる可能性がある。

 蓄熱技術を利用した新しい家電製品も登場し始めた。パナソニックが2010年10月に発売したエアコンがそれだ。室外機にある空気圧縮機が出す熱を蓄熱材料に貯め,それをヒートパイプで輸送して熱交換器を温める仕組みを実装したのである。

『日経エレクトロニクス』2010年11月1日号より一部掲載

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