恐ろしい現象が起きている。2010年9月14日、ニューヨーク外国為替市場の円相場は一時、1ドル=82円91銭の高値をつけた。円が82円台に突入したのは、実に15年3カ月半ぶりという。
円が1円上がると、30億円失われるとか300億円失われるとか、企業規模によっていろいろとささやかれる。一般に、優良企業といわれる製造業の売上高営業利益率は、たかだか5~6%。それ故、円高による減収分は、そのまま利益部分を食いつぶしてしまう恐れがある。そこで、賢明な読者には失礼だが、今回はまず円高の影響をおさらいする。案外、分かっているようで分かっていない方もいらっしゃると思うので、できるだけ平易に説明したい。
ここでシミュレーションするのは、売上高1兆円のものづくり系企業。もし読者の所属する企業が同1000億円であれば、10分の1で考えていただきたい。円高は、1ドル=95円から1ドル=85円に進行したとして試算する。加えて、(1)売上高比率は国内と輸出で半々、(2)原価率は75%、(3)変動原価のうち、約70%が購入品費、(4)海外調達比率が10%、を前提条件としよう。
〔以下、日経ものづくり2010年11月号に掲載〕
VPM技術研究所 所長