2010年5月、小径タイヤの折り畳み自転車に乗っていた50歳代の男性が、顔面の骨折や裂傷など1カ月のけがを負うという事故が発生した。約4cmの段差を越えたところでフレームが破損して転倒したのだ。従来の一般的な自転車では難なく通過できるはずの段差で事故が発生した背景には、小さくて軽いという携帯性の良さと安全性とのトレードオフがあった。

 折り畳み自転車は、フレームやハンドル、ペダルなどが折り畳めるようになっている自転車だ。折り畳むことで、収納や搬送が容易になり、自動車で運んで外出先で利用したり、盗難防止を目的にマンションの自室で保管したりといった使い方がされている。

 一般的な折り畳み自転車は収納性を向上するために、車輪径の呼び寸法が20インチ(約50cm)以下である場合が多いが、今回事故を起こした製品は前後輪とも8インチ(約20cm)とかなり小さい。しかも、タイヤは内部に空気を入れない中実のソリッドタイヤだった。

 折り畳みを実現する構造も、一般的な折り畳み自転車とは異なっている。一般的な折り畳み自転車がフレームを前後方向に2分割して前後輪を合わせるように折り畳むのに対して、事故品はフレームを伸縮したり折り曲げたりと複数の可動部がある(詳細については後述)。

 国民生活センターが事故品を入手してその破損状況を確認すると、フレームの一部が破断したり、亀裂が入ったりしていた(図)。破損していたのはいずれも、フレームを伸縮する接合部だった。

〔以下,日経ものづくり2010年11月号に掲載〕

図●事故品の破損状況
ハンドルと前輪の間にあるフレーム(チューブ)が破損していたほか、後方のフレームにも亀裂が発生していた。(写真:国民生活センター)