ドイツZF社は8速自動変速機「8HP」シリーズのオプション機能として、アイドリングストップ機構を構成するアキュムレータ「HIS」(Hydraulischer ImpulsSpeicher)を設定した(図)。複雑で電力消費量の多い電動の油圧ポンプを使わなくて済む。既にドイツAudi社がディーゼル乗用車「A8 3.0TDI」に採用した。

 HISはシリンダの中に高圧の油をためておくアキュムレータ。変速機を作動させる油圧を蓄えておき、再始動するときに使う。エンジンが回っているとき、油圧ポンプから出てくる高圧の油を約0.1L蓄える。この油圧でピストンを左に押して主ばねを圧縮しておく。圧力はエンジンを回して5秒以内に9barに達する。ピストンの左側にはロック機構があり、主ばねを圧縮した状態でロックしておく。
 アイドリングストップのときエンジンは止まるので、エンジンで駆動するポンプからの油圧はなくなってしまう。アイドリングストップを終えて再始動するとき、ロック機構を外し、弁を開く。ピストンはばねの力で右に動き、HIS内部の高圧の油を変速機に送り出す。

以下、『日経Automotive Technology』2010年11月号に掲載
図 ZF社の8速自動変速機「8HP」
ドイツAudi社、同BMW社など多くの高級車に使われている。