北欧の一部地域で2009年末にスタートした「LTE」。2010年末には日本でもNTTドコモが「Xi(クロッシィ)」という名称でLTEを使ったデータ通信サービスを始める。10MHz幅で最大75Mビット/秒というデータ伝送速度を実現するLTEによって機器やネットワーク・サービスの使い方はどのように変わるのか。モバイル・ブロードバンドが普及した未来のライフスタイルについてゲーム,クルマ,通信の立場から3人の識者が語る。

──2010年末に,国内でもLTE(long term evolution)を使ったモバイル通信サービスが始まります。こうしたサービスが広がったときに,果たして人々のライフスタイルはどう変わるのか,そしてどんな新しい端末が生まれるのか──。ここでは,1~2年後というよりも,5年後の可能性について議論できればと思っています。
 まず,LTEの登場にはどのようなインパクトがあるとお考えですか。

鈴置氏 LTEのような広帯域で低遅延のモバイル・ネットワークがあるというのは,それを活用する側からすると,ものすごく大きなプレー・グラウンドが目の前に広がっているようなものです。さらに,本格的なLTEサービスを最初に日本で使えることは,我々にとって非常に大きなアドバンテージです。そこでいろいろなことをやってみて国際的に展開できるようなものを見つけられたら,海外にも出ていけるはずです。

時津氏 「7500万台のクルマをネットワークにつなげば,そこに巨大なマーケットが生まれる」という思いを持ってインターネットITS協議会を設立したのが2001年です。当時は,自動車メーカーの方からこんなことを言われました。「ぶちぶち切れてしまうような携帯電話に,君は命を懸けられるのか」と。しかし,その問題は時間がたてば解消すると信じてやってきました。3G(第3世代移動通信システム)の進化とともに,そうした抵抗感は小さくなってきています。それがLTEになってさらに高速になれば,当時感じていた通信に関する障壁が一挙になくなると期待しています。

福田氏 LTEサービスの普及は,汎用通信の時代の終わりを告げるでしょう。一人のユーザーが帯域を占有してHDTV映像をずっと流すことだって可能ですが,そうした使い方ではとてもコストに見合った収益が得られません。これからは,「この製品だけ」「このアプリケーションだけ」といったモバイル通信が中心になりそうです。そうした通信でなければ,コストダウンが図れないからです。

『日経エレクトロニクス』2010年10月4日号より一部掲載

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