近接場光で微細な光論理回路を実現へ

 2010年9月14~17日に長崎大学で開催された「2010年秋季 第71回応用物理学会学術講演会」では,Siを基にした従来の回路技術の延長上にはない,斬新な回路素子の発表が相次いだ。具体的には,(1)グラフェンやカーボン・ナノチューブ(CNT)を活性層などに利用して超高速動作および大面積用途への適用を目指したトランジスタ,(2)低損失かつ高温動作が可能なダイヤモンド・ダイオード,(3)「光LSI」の実現に向けて光を入出力する「光論理ゲート」などの回路素子,である。

半導体としての炭素材料にメド

 グラフェンやCNTに関する研究発表は,シンポジウムの講演などを含めて約130件超あった。その中でも,トランジスタを実際に試作した例が急増しているのが特徴である。これらの背景には,バンドギャップがなく,金属的な特性を示すとされていたグラフェンについて,2層にするとバンドギャップが生じて半導体になることが判明したことがある。CNTも単層のものであれば,半導体の特性を持つものと,金属の特性を持つものを分離する技術にメドが立ったことなどがあるようだ。

 今回試作されたグラフェンやCNTを用いたトランジスタは,製造プロセスや想定する用途が非常に多様であることも特徴の一つである。

『日経エレクトロニクス』2010年10月4日号より一部掲載

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