医療機器メーカーのシスメックスは、ベテラン技術者の暗黙知に直接頼る開発体制から、客観的根拠や明文化されたプロセスを重視する開発体制に移行する。新製品の開発や海外市場の開拓に取り組む上で、開発体制の抜本的な改革が必要と判断した。「今後、半年ぐらいかけて新しい考え方を全社に浸透させていく」(同社品質保証本部長の藤本敬二氏)。その際、暗黙知の活用法がカギを握るという。

 開発プロセスを文書で規定し、それを守ることで製品の品質を確保するという発想自体は、それほど目新しくない。しかし、それを実行することが難しい。医療機器の品質については、ISO13485という医療機器に特化した、厳しい国際規格が存在しており、メーカーに対して同規格への適合を要求している国/地域が多い。中でも、米国の食品医薬品局(FDA)は、非常に厳格な査察体制を敷いている。

 同社は2001年と2004年にFDAの査察を受けたが、その対象はいずれの年も既存製品(血球計数装置)の改良版だった。しかし、今後は全く新しい製品を市場に送り出そうとしており、査察対応の強化が不可欠と判断した。

〔以下、日経ものづくり2010年10月号に掲載〕