写真:栗原克己

 「機動戦士ガンダム」で、モビルスーツのデザインを担当しました。私はアニメというバーチャルな世界のメカニックデザイナーで、リアルの世界の工業デザイナーではありません。だから、工業デザイナーと同じことをしていてもダメ。どこかに遊び心がないといけないんですが、私が心掛けているのは、ウソのないデザインをすることです。

 実は、アニメのメカニック・デザイナーというのは、絵が好きなメカニック・デザイナーと、メカが好きなメカニック・デザイナーの2つに分かれます。業界に多いのは前者の方で、そういうデザイナーはどこから見ても美しいデザインをする。例えば、前と後ろは別物としてそれぞれをカッコ良く描く。ところがそれをやると、プラモデルにするときに面がつながらないなどの弊害が出てしまうことがあるんです。まあ、それでも、プラモデルの設計と生産の部隊の方で、うまく取り繕ってくれますけど。
〔以下、日経ものづくり2010年10月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

大河原邦男(おおかわら・くにお)
メカニック・デザイナー
1947年東京生まれ。東京造形大学卒業後、大手アパレルメーカーを経て、1972年竜の子プロダクション入社。「科学忍者隊ガッチャマン」以後、メカデザイン専門に。1976年、中村光毅氏と「デザインオフィス・メカマン」設立。「タイムボカンシリーズ」を経て、1978年からフリー。「機動戦士ガンダム」「太陽の牙ダグラム」「装甲騎兵ボトムズ」などのリアルロボット・アニメから、「勇者シリーズ」などのスーパーロボット・アニメのメカデザインを担当。近年はメカデザインの第一人者として、「ヤッターマン(2008年版)」などのギャグアニメをはじめ、玩具やゲームなど幅広い分野で活躍中。