高性能プロセサに関する国際学会「Hot Chips 22」が2010年8月,米国パロアルトで開催された。同学会では,AMD社がIntel社のAtom対抗となる次世代アーキテクチャを発表。ARM社はスマートフォン向けの次世代プロセサで仮想化機能の導入を明かすなど,モバイル分野での動きに注目が集まった。このほか,Microsoft社はXbox 360の新機種向けにGPUとCPUを1チップ化したSoCを,IBM社は世界最速となる5.2GHz動作のメインフレーム向けプロセサを発表した。

AMD社の「Bobcat」の内部構成

 ネットブックの市場で長らく米Intel Corp.の後塵を拝してきた米Advanced Micro Devices, Inc.(AMD社)。同社がついにIntel社のネットブック向けプロセサ「Atom」の追撃に向けて動きだした。

 2010年8月に米国で開催されたマイクロプロセサ関連の国際学会「Hot Chips 22」において,AMD社はネットブックやタブレット端末などの携帯型機器に向け,次世代のx86マイクロアーキテクチャ「Bobcat」を発表したのだ。熱設計電力(TDP)で1Wを切るとしており,スマートフォンへの適用も視野に入るが,まずは中核となるネットブック向けにデュアルコア構成で,GPUと一体化したSoC「Ontario」を2011年初頭に投入する。

 2007年10月の台湾ASUSTek社の「Eee PC 701」発売をキッカケとするネットブック市場の興隆以後,これまでネットブック向けプロセサはほぼIntel社の独壇場だった。年間約4000万台以上ものネットブックの大半にAtomが搭載されている。

 こうしたネットブック市場におけるIntel社の覇権を崩すため,AMD社が満を持して投入したのが,今回のBobcatマイクロアーキテクチャである。AMD社はこれまで,Intel社のAtomのようなネットブック専用のマイクロアーキテクチャを持っていなかった。このため,2008年以後のネットブック市場の急成長を,AMD社は指をくわえて見ているしかなかった。今回のBobcatは,ネットブックを想定してAMD社がスクラッチから設計した。Atomの登場から数年を経て,ようやくAMD社はIntel社を追撃する態勢を整えた。

『日経エレクトロニクス』2010年9月20日号より一部掲載

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