雑誌 特集

LTEで始まるハードな戦い

次世代端末プラットフォームを奪え

蓬田 宏樹,竹居 智久=日経エレクトロニクス
2010/09/03 09:00
 

第1部<総論>
モバイルの将来担う「LTE」
端末開発に二つの壁

LTEサービスが,いよいよ世界の主要地域で開始される。市場の高い成長が期待されることから,関連メーカーの動きが活発だ。次世代のプラットフォームの主導権争いが,早くも始まっている。

LTE端末市場は2013年ごろから拡大へ

 「今年12月から開始するLTEは,下りで最大75Mビット/秒と高速だ。端末とネットワークを組み合わせた,新たなサービスを生み出せる」(NTTドコモ 代表取締役社長の山田隆持氏)。

 光ファイバ通信並みの高速サービスを,いつでもどこでも利用できる時代に,ついに突入する。次世代の高速移動通信規格「LTE(long term evolution)」を利用した通信サービスが,満を持して日本国内で始まるのだ。NTTドコモが2010年12月から,「Xi(クロッシィ)」という名称のデータ通信サービスとして開始する。屋外では最大37.5Mビット/秒,一部の屋内では最大75Mビット/秒と,現行のW-CDMAに比較して10倍程度の速度となる。

 日本だけではない。海外では既に,2009年末からスウェーデンTeliaSonera社が北欧の一部地域でサービスを開始していたが,いよいよ北米大手の米Verizon Wireless LLCがサービスを開始する。このほかにも複数の大手事業者が,2010年末~2011年前半にLTEサービスを開始する予定である。LTEの導入が,世界でようやく始まる格好だ。

 LTE対応の音声端末やデータ通信カード市場が高い成長を期待できることから,関連する半導体や部品を手掛ける企業の取り組みが活発化している。LTE 端末のコアとなる,通信制御回路部やRF回路部の各要素部品を手掛ける企業などだ。いわゆる,「携帯端末のハードウエア・プラットフォーム」企業である。

『日経エレクトロニクス』2010年9月6日号より一部掲載

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すぐ分かる Long Term Evolution

『日経エレクトロニクス』2010年9月6日号より一部掲載

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第2部<ベースバンド>
マルチモードが前提条件
高集積化競争も進む

LTE時代のチップセットには,LTEと3Gに対応するベースバンド処理LSIが不可欠になる。半導体メーカーはマルチモード対応品を提供する体制を着々と整えている。当初は3G用とLTE用を単に並べた回路だが,徐々に高集積化やSDR化が進みそうだ。

LTE対応チップセットの課題と進化の方向性

 携帯電話機向けチップセットを提供する半導体メーカーが,LTE時代に向けた準備を着々と進めている。その焦点となっているのが,いわゆる「マルチモード」に対応するデジタル・ベースバンド処理回路である。

 第1部で触れたように,LTEが導入されてから当面の間,携帯電話機などの機器はLTEと3GやGSMを,場所に応じて使い分けることになる。そのとき,機器にLTE専用のベースバンド処理LSIを別途実装する形態だと,実装面積やコストの面で不利になってしまう。LTEプラットフォームの争奪戦に参加しようともくろむ半導体メーカーにとって,マルチモードのベースバンド処理LSIが不可欠な要素となってきた。

LTE用ベースバンドを取得

 ルネサス エレクトロニクスと台湾MediaTek Inc.が2010年7月に相次いで大きな動きを見せたのも,LTEなどに対応するマルチモードのベースバンド処理LSIの重要性が高まっていることの表れだ。

『日経エレクトロニクス』2010年9月6日号より一部掲載

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第3部<RF回路>
メーカー悩ます「RFクライシス」
マルチバンド技術で乗り切る

多数の周波数に対応するLTE端末を実現するため,RF回路にはこれまで以上に高度なマルチバンド技術が求められる。RF ICやパワー・アンプ,デュプレクサなどそれぞれの領域で取り組みが進む。

RF回路のマルチバンド化の動向

 LTEのハードウエア・プラットフォームにおける最大の問題点。それは,利用する周波数帯が多いため,端末のRF回路が膨張してしまうことだ。

 多数の周波数帯に対応するためには,RF回路にそれだけ多くの部品が必要になる。例えば,送信側のパワー・アンプ(以下,PA)の場合,3G向けで4バンド対応であれば四つのPAが必要になることも多い。

 こうした構成のままLTE用の新たな周波数帯を追加していくと,700MHz帯用,また2.5GHz帯用といった形で,追加する帯域に合わせてPAやフィルタ,送受分波器(デュプレクサ)などの必要数も増える。加えて,LTEではMIMO受信への対応も求められており,受信回路が2系統必要になるなど,さらに部品点数が増えてしまう。RF回路の部品点数の増加がコストと実装面積の増加を招く,「RFクライシス」とも呼べる状況に陥ってしまうのだ。

 ハードウエア・プラットフォームの設計の現場では,こうした部品点数の増加をどこまで許容しつつ携帯電話事業者のマルチバンドに対する要求に応えるか,コストと実装面積の制約の中で,ぎりぎりの調整が始まっている。

『日経エレクトロニクス』2010年9月6日号より一部掲載

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