電子機器メーカーである横手精工が将来の事業の柱として期待するアグリビジネス。栽培装置の提供を念頭に置きつつ、まずは野菜の栽培・販売を手掛ける。付加価値の高い農作物を安く育てられることを、身をもって示すことで、装置販売につなげる考えだ。

 秋田県の南東部、奥羽山脈と出羽山地に囲まれた横手盆地は、国内有数の穀倉地帯だ。その横手市に、1981年に設立された横手精工は、プリント基板の実装や半導体関連設備などの組立事業を展開するほか、搬送装置などを自社開発する(図)。

 そんな同社が2010年6月から、人工光を使った水耕栽培(植物工場)によって野菜を量産し、東京都などへ出荷するという事業を開始した。野菜を育てて売るという、本業とは一見、関連がない事業。しかし、同社が持つ人的・技術的な資産を活用できる。何より、野菜栽培の先には栽培装置の提供という、ものづくり企業としての王道の事業展開が待っている。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

図●横手精工の既存事業
プリント基板実装エンジニアリング事業としては現在、売り上げの6割以上を車載機器(カー・ナビゲーション・システムなど)が占める。社内には、チップマウンタ高速ラインを持つ(a)。このほか、半導体製造設備などの産業機械設備の組立事業、チップマウンタヘッドなどの産業機械機構部/ユニットの組立事業などが柱となる(b)。搬送装置や医療機関連製品などの開発も手掛ける。