「山田日登志のこれがムダなんや」は、生産現場におけるムダとりのコツをクイズ形式で学べるコラム。実在する工場で見つかったムダの写真から、そのどこにムダがあるかを見つけ出すことで「ムダとりの目」を養ってもらうことを狙う。

 どんなに優秀な工場管理者でも、自社の工場に潜むムダを見つけ続けることは難しい。現場の状況が「当たり前」になり、ムダを見抜く目が曇りがちになるからだ。今回は、そんな管理者が気を付けたいポイントを学ぶ。

 今回から、電子部品や医療機器の組み立てなどを手掛けるアルファ電子(本社福島県・天栄村)にカイゼンの舞台を移す。同社は2007年から、山田日登志氏の現場指導を受けている。

「7月○日に、そちらにうかがいます」

 2010年7月某日、山田氏は同社社長の樽川久夫氏に何の前触れもなく電話を入れた。同社のカイゼンの進ちょくが気になっていたのだ。

 そして当日。工場のドアを開けると廊下があり、その右手にガラス張りの部屋がある。山田氏はその前で立ち止まり、ガラスの向こうにいる1人の作業者の動きをじっと見つめた。

「君ら、あの作業者の動きのどこにムダがあるか分かるか?」

 そばにいた管理者たちに問う。山田氏が見抜いたムダとは…。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

山田日登志(やまだ・ひとし)
トヨタ生産方式を270社に導入した経験を持つコンサルタント。岐阜県生産性本部在籍中に大野耐一氏と出会い、1971年から師事。1978年にカイゼン・リーダーを育成するPEC産業教育センターを設立し、所長に就任。ソニーを指導中にセル生産の基礎を築いた。