正直にいって、野菜や果物をカットしたりスライスしたりする機械の専業メーカーがあるとは思ってもいなかった。あるとしても大きな食品加工メーカーから依頼される自動機や専用機を造るメーカーか、あるいは治具/工具メーカーがその技術を生かして副業的に造るのなら分かる。しかし、小型の汎用食品加工機専業のメーカーとして成り立つのは難しい。
なぜ難しいのか。何よりも、マーケットが小さい割にはものづくりの幅が広いので、利益を上げるのが難しいと思うからだ。経営が成り立つとしたら、よほど合理化した工場を持って生産性を上げるか、筆者がいうところの“五重苦ものづくり”を実践しているか、そのどちらかしかないはずだ。それが、長年、開発のお手伝いをする中で身に付けた勘である。だから、そのような専業メーカーがあると聞くと、一体どのようなものづくりをしているのかを知りたくなる。
筆者はおよそ20年前から、少量・多品種・異形・不定期・低頻度のものづくりを、応援の思いを込めて五重苦ものづくりと言っている。逆説的だが、バブルがはじけて大きなダメージを受けた日本の製造業は、大量・少品種・均一・定期・高頻度のものづくりを続けている限り、早晩中国に追い付かれて、先のないコスト競争に巻き込まれるだろう。だから、これからはその真逆のものづくりでないといけないと思ったのである。
〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕
システム・インテグレーション 代表取締役