3次元CADを導入したが、なかなか開発プロセスの効率化が進まない──。そう悩んでいる企業は少なくない。この悩みは、新しい機能を持ったツールを導入したからといって解決するものではない。3次元設計に取り組んではいるが、十分な効果が得られていない企業の体質のどこに問題があるかを分析し、その結果に応じた改善方法を選択できるスキルを、本コラムでは伝授します。

 設計における3次元設計基盤づくりがほぼ出来上がると、社内の3次元設計比率が増えてくる。それに続く取り組みとして前回(2010年8月号)解説したのは、「形状モジュール化」で金型要件や生産要件を設計段階から3次元モデルに盛り込むことによって、3次元設計の効率と品質をさらに高めることだった。こうして3次元モデル作成という「種まき」が十分にできるようになったら、次はその効果の刈り取りである(表)。

 今回は、3次元モデルを生産工程の広い範囲で活用していく上で、効果の刈り取りといった点から配慮すべきポイントを解説する。

 設計部門が生産工程に伝えるべき設計意図とは、要求品質を満たす製品を造るための指示事項である。設計意図の伝達の目的と必要性は、それ以外にはない。

 その点、3次元モデルは、製品が完成したときの形状を如実に表したものであるので、2次元図面よりもはるかに分かりやすく、伝わりやすい。しかし、根底にある設計意図は、単に形状を表しただけの3次元モデルからは分からない。試作、製造、検査などの工程を分業でこなすためには、何らかのルールを構築して、設計意図を含んだ「3次元図面」として流通させる必要が出てくる。3次元設計の効果を生産工程で刈り取るには、図面レスを実現する3次元図面流通の基盤を構築したい。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

表●3次元設計をベースとした開発プロセス構築に向けた取り組み
今回は、グループEの取り組みを解説する。
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團野 晃(だんの・あきら)
O2 技術ディビジョン コンサルタント
大手自動車部品メーカー、製造業向けコンサルティング・ファームを経てO2(東京本社)へ参画。量産機能部品の生産技術、3次元CADによる製品設計から生産工程までをカバー。業務改革を業務・システム両面で実施してきた。O2では14年に及ぶ経験を生かし、「3D-DPRM」を柱にしたコンサルティング活動に従事。
O2(http://www.o2o2.co.jp/)は、設計開発領域を専門とするプロ集団。顧客企業の業務プロセス改革、高度な技術課題解決を総合的に支援。3D-DPRMなど独自の方法論を持つ。