自動車のパワーウインドーに手などを挟み込む事故が後を絶たない。2010年4月7日に東京で、生後11カ月の女児が母親の閉めたパワーウインドーに小指を挟まれて切断したほか、3日後の10日には長崎市で小学校2年生の男児が首を挟まれ一時意識不明の重体となった。これを契機に、国民生活センターがその機能と安全性を調査し、関係省庁も対応に乗りだした。

 パワーウインドーによる事故は、今に始まったことではない。国民生活センターの「危害情報システム」には、2005~2009年度の5年間だけでもパワーウインドーによる事故が23件登録されている。

 被害者は圧倒的に子供が多く、そのほとんどは手や指を挟んだというものだ。危害の程度としては「打撲傷・挫傷」が最多だが、「骨折」や「切断」といった重篤な事故も複数件登録されており、その危険性は決して軽視できない(図)。

 同センターがパワーウインドーの安全性に関する調査に乗りだしたのも、しばしば事故が発生しているためである。実は、1999年と2003年にも同様の調査を実施している。つまり、10年以上前からその危険性は指摘されていたのだ。詳細は後述するが、近年は指などの挟み込みを防止する機能を搭載する車種が増えるとともに、より小さな負荷でその機能が作動するなど、かつてに比べると総じて安全性は高まっているといえる。しかし、現在も事故はなくならず、抜本的な対策を打てていないのが実情である。

〔以下,日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

図●パワーウインドーに関連して報告されている危害情報
被害者は10歳未満の乳幼児が圧倒的に多い(a)。挟まれる個所はほとんどが指で、打撲傷や挫傷が多い(b、c)。