世界最大の工作機械消費国となった中国。好調な中国の工作機械市場を狙って、多くの日本メーカーが中国内の販売拠点やサービス拠点、生産拠点などを拡充している。日本の市場がかつての勢いを取り戻せない分、日本メーカーが中国市場に期待する度合いも大きい。

 中国市場を開拓する手段として日本メーカーがまず取り組むのが、機能を絞った低価格機などをラインアップに加えること。日本メーカー製工作機械は性能や品質の高さで定評があるが、中国市場においてはオーバースペックである場合も少なくなかった。ところが最近、中国市場におけるユーザーニーズが変化しつつあるという。「以前は価格の安い中国メーカーの工作機械を購入していたユーザーが、我々日本メーカーの工作機械を買い足すようになってきた」〔OKK(SHANGHAI)社・董事総経理の堤橋一典氏〕。

 理由は2つある、と同氏は分析する。1つは、中国内の工作機械ユーザーが海外の顧客を相手にする際、品質規格を満たすために加工する機械にも配慮する必要が生じていること。もう1つは、中国内での同業他社が多くなり、コストではなく品質をウリにしないと競争に勝ち抜けなくなっていることだ。

 この市場の変化を中国メーカーもとらえている。日本メーカーが高性能な工作機械を輸出する際には「外国為替及び外国貿易法」(外為法)の規制で、市場ニーズに応えにくい部分がある。その間隙を埋めるように、同時5軸制御が可能なマシニングセンタ(MC)などを市場投入する中国メーカーが増えているのだ。

 2010年7月に中国・上海で開催された「12th Shanghai International Machine Tool Fair(上海国際工作機械見本市)」に出展された工作機械から、その現状を見てみよう。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕