新日鉄住金ステンレス(本社東京)は、0.1質量%程度のスズ(Sn)を添加することで、フェライト系ステンレス鋼(以下、フェライト系)の耐食性を大幅に向上させた新鋼種「NSSCFW1」を2010年7月に発売した。微量に添加したSnの効果によって高い耐食性を保持したままクロム(Cr)の含有量を低減できるので、加工性にも優れる。用途によっては1~3割のコスト削減を見込める。Snを添加したステンレス鋼は世界初である。

 ステンレス鋼にはさまざまな種類があるが、Crとニッケル(Ni)を添加したオーステナイト系のSUS304(Crが18質量%、Niが8質量%)が生産量の4割強を占めている。次いで多いのが、Niを含まないフェライト系のSUS430(Crが18質量%)で約1割だ。両鋼種は、耐食性とプレス加工性に優れるSUS304と、性能は劣るが安価なSUS430という具合に使い分けられている。近年は、その間を埋める材料としてSUS430の炭素(C)と窒素(N)の含有量を下げて加工性と耐食性を向上させた高純度フェライト系の開発が進んでいた。NSSCFW1はこうした流れの中で、Snを添加するという世界初のアプローチによって開発された新種の高純度フェライト系ステンレス鋼である(図)。

〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕

図●「NSSCFW1」の特性イメージ
NSSCFW1はスズを添加することで、耐食性と加工性を向上させた高純度フェライト系ステンレス鋼。価格は、従来の高純度フェライト系ステンレス鋼よりも1~2割安い。