写真:栗原克己

 私たちは、原子力発電所向けに、圧力容器とか発電機のロータシャフトといった極めて高い品質や信頼性が要求される部品を製造しています。そんな当社が世界中から注目を集める背景には、米国などの国々が一時凍結していた原発建設を相次ぎ再開する、いわゆる「原子力ルネサンス」があります。CO2をはじめとする温室効果ガスによる地球温暖化や、化石燃料の枯渇といった世界全体を取り巻く環境問題のほか、エネルギの安定供給といった安全保障上の問題などから、今、世界各地であらためて原発が見直されているんですね。

 特に当社の場合には、原発の出力容量が大きくなると同時に部品の大型化が進む中、「大型鍛鋼品を安定的かつ経済的に造れるのは日本製鋼所だけ」という高い評価を頂き、ちょうど3年前の創業100周年の時には過去最高益を記録しました。こうして、原子力ルネサンスという大きな波にうまく乗れたのは、先輩たちが築いてきたものづくりをうまく受け継いできているからだと考えています。
〔以下、日経ものづくり2010年9月号に掲載〕(聞き手は本誌編集長 荻原博之)

佐藤 育男(さとう・いくお)
日本製鋼所 代表取締役社長
1949年2月生まれ。1972年3月北海道大学工学部原子工学科卒業、同年4月日本製鋼所入社。1996年7月室蘭製作所原子力製品部長、2001年2月室蘭製作所副所長、2004年3月室蘭製作所長、2005年6月取締役室蘭製作所長、2008年6月常務取締役鉄鋼事業部副事業部長兼室蘭製作所長、2009年2月常務取締役鉄鋼事業部副事業部長、同年6月代表取締役社長を経て、現在に至る。